コミットと一貫性の心理学

 

今回の要点先読みコーナー

・人間は自分の決定や立場を正当化するように行動・発言する

・相手の決定や立場を変えることは難しい

・コミットメントと一貫性の原理を応用して売上をアップさせることが可能

・ビジネスではあくまで「お客様のため」が最重要!

 

あかパンジー(得意げ)

俺はこう思う!絶対にその通りに違いない!

 

ロボット

このように、人間は自分が一度した発言は、間違っていたとしても訂正し辛いという心理があります。

 

あかパンジー(驚き)

ちょ!

それでは詳しい内容が気になった方は、本文をお読みください。

 

 

今回はビジネスのあらゆる分野で取り入れられている、

「コミットメントと一貫性の法則」について解説していきます。

 

過去にご紹介したフロントエンド商品の設置も、

この原理を元に行われていると言えます。

 

このコミットメントと一貫性の原理を理解し、

ビジネスに応用していくことによって

 

・成約率のアップ!

・予約のキャンセル率の低下!

 

などなど、様々なメリットがあります。

 

 

自動車の販売店など、

大手企業でも積極的に取り入れられているテクニックです。

 

・これからビジネスを始めようと考えている起業予定者の方

・なかなか売り上げが伸びずにお困りの経営者様

・営業職で働いている方

 

上記のような方には特にオススメです。

 

ぜひ読んで、利益や業績のアップにつなげましょう!

 

 

コミットメントと一貫性の原理とは何か?

 

まずは今回お伝えするコミットメントと一貫性の原理について、

どういうものなのかを解説していきます。

 

 

コミットメントと一貫性の原理の内容

 

コミットメントと一貫性の原理とは

 

人間は一度何かを決定したり、ある立場を取ると、

周囲や自分の心の中からその決定や立場を貫くように心に圧力がかかる。

 

その結果、自分の決定や立場を正当化するような行動や発言をする。

 

 

・何らかの行動を含む決定

・自分の決定や立場が人前に公表される

・何らかの努力をする

・外部からの強要ではなく、自分で選択・決断する

 

上記のような4つの条件が含まれる場合、特に強力に働く。

 

というものです。

 

これだけでは少し分かりにくいと思うので、

「喫煙者と嫌煙者の会話」を例にご紹介してみたいと思います。

 

 

例えば嫌煙者の方が喫煙者の方に対して

「タバコを吸うと脳に酸素が行かなくて、頭が働かなくなるらしいぞ!」

と言ったとします。

 

その場合喫煙者の方はどのような反応をするでしょうか?

 

「そうか!じゃあタバコ吸うのやめるわ!」

と相手の意見や自分の非を認める発言をする方というのは中々いません。

 

その代わりに

「いや逆だよ、タバコ吸うと頭がシャッキリするんだよ」

と反論で返す方は非常に多いです。

 

 

タバコに含まれる一酸化炭素が酸素を全身に運ぶのを邪魔するため、

その影響で脳も酸素不足になってしまうというのは有名な話です。

 

しかし喫煙者の方というのは

 

・「自分はタバコを吸う」という決定をしている

・「自分は喫煙者である」という立場を取っている

 

という方なので、コミットメントと一貫性の原理が働いています。

 

そのため、自分の決定や立場を正当化する発言をするわけです。

 

 

何故こうした心理が働くのか?

 

その理由を一言で言うなら、

「人間は周囲からの評価を気にする生き物だから」です。

 

 

一般的に、自分の決定や立場から一貫した行動を取る人間というのは、

周囲の目からは合理的で芯が通った、信頼できる人という評価を受けます。

 

「有言実行」という言葉がありますが、

自分の言ったことをしっかりとやり通す人というのはカッコイイですよね!

 

 

逆に自分の決定や立場から一貫した行動を取らず、

考え方や意見があっちへ行ったりこっちへ行ったりする人間というのは、

気まぐれで優柔不断、軽率な人間という評価をされてしまいます。

 

立派な公約を掲げて選挙に当選したのに、

それを果たさない役員というのは痛烈に批判されますよね。

 

 

誰しも周囲から白い目で見られたり、

批判されるのは避けたいと考えるものです。

 

そのため「自分の立場から一貫した行動をしていればいい」

という思考が本能的に備わっています。

 

 

コミットメントと一貫性の原理を崩すのは難しい

 

人間は自分の決定や立場が間違っている時でも、

その意見をかたくなに曲げずに一貫した行動を取りたがることが多々あります。

 

 

例えば先ほどの喫煙者の例もそうです。

 

健康面で考えた場合、タバコを吸うというのが体に悪いのは明確です。

 

しかしそれでも意見を曲げずに反論し、

自分の正当性をアピールしてしまいます。

 

 

何故このようなことが起こるのか?

それは「自分の決定や立場を変えるのは面倒だから」です。

 

自分の立場や決定・考え方を変えるというのは、

「では次にどうすればいいのか?」を考えることにつながります。

 

この「次」を考えるのが人間にとっては非常に面倒で不快なのです。

 

 

過去記事の

 

・品揃えが豊富だと逆に商品が売れなくなる理由

・バンドワゴン効果:お客様の声が売上を伸ばす理由

 

でもご紹介しましたが、

人間の脳というのは一日の全消費カロリーのうち20%もの割合を占めています。

 

 

脳の重さは体重のおよそ2%くらいしかないのに、

それだけ多くのカロリーを使っています。

 

つまり脳というのは普段からかなりの負荷がかかっており、

必要以上に悩んだり考えたりして余計に負荷をかけられるのは避けたいのです。

 

そのため、新しいことを考えるよりも今までやってきたことを続ける方が楽なので、

自分の決定や立場が否定されても自己正当化しようとするのです。

 

脳は余計な仕事をしたくない!

 

 

コミットメントと一貫性をビジネスに応用した例

 

・「コミットメントと一貫性がどんなものかは分かった」

・「けどどうやってビジネスに活かせばいいのか、そろそろ教えてくれないかな~」

 

そうお考えの方も多いと思います。

 

前置きが長くなってしまいましたが、

コミットメントと一貫性の原理をビジネスに応用し、

利益を上昇させた例をご紹介していきます。

 

 

レストランの「すっぽかし」を20%改善!

 

レストランなどの飲食店を経営する上での困り事として、

「予約したお客様が結局来なくて、料理が無駄になってしまった…」という、

いわゆる「お客様のすっぽかし」があります。

 

 

あるレストランでは、

予約客がすっぽかす割合が30%もあったそうです。

 

ですがこのすっぽかしを受付スタッフの対応を

たった一言変えただけで20%も下げた例があります。

 

 

「一体どんな気の利いたセリフに変えたのか?」と気になるところですが、

実は本当に些細な言い方の変化でしかありません。

 

「ご予約をキャンセルなさる時はお電話ください」

というマニュアル通りのセリフを

 

「ご予約をキャンセルなさる時はお電話いただけますか?」

に変えただけです。

 

 

前者のセリフの場合は、

会話が一方通行で終わってしまいます。

 

しかし、後者の場合は「お電話いただけますか?」と相手に質問する形になります。

 

すると、相手も「分かりました」とか「はい」と答えます。

つまり「キャンセルする場合は電話をする」という立場を取ることになるわけです。

 

その結果、すっぽかしの割合を見事20%も削減することに成功しました。

 

 

ほんの少しセリフを変えただけで、これだけの利益になるとは…

コミットメントと一貫性恐るべしですね。

 

 

自動車の販売店での活用例

 

自動車の販売店でもこのコミットメントと一貫性の原理は活用されています。

 

 

自動車というのは高価な物なので、

いきなり「この車ください!」と即決するお客様はいません。

 

また、「この車買ってください!」といきなり売り込んでも、

あっさりと買ってくれる人というのはいません。

 

つまり、「お客様に少しずつ商品を良く思ってもらうこと」が重要なわけです。

 

 

そこで自動車の販売店では

 

・まずは試乗してもらい、「良い車でしょ?」と聞く

・契約書などを書いてもらう

・頭金を払ってもらう

 

などの手順を取ったりします。

 

 

前述の通り「何らかの行動を含む決定」というのは、

コミットメントと一貫性の原理を強く働かせる要因の一つです。

 

試乗するという行動や契約書を書くという行動、頭金を払うという行動…

細かい行動の積み重ねによってお客様の

 

・「自分は車を気に入っている」

・「自分は車を買うつもりがある」

 

という立場を強めていきます。

何だか催眠術のようですね…。

 

 

こうして少しずつお客様に商品をアピールし、

最終的に商品の購入につなげるという方法は、

自動車だけでなく様々な分野で活用されています。

 

 

私自身の体験

 

私が以前長野にいた頃の話です。

 

長野のB級グルメが集まる「食の合戦」というイベントに、

友人のお菓子屋さんのスタッフとして参加させていただきました。

 

 

その時、商品の売上を上昇させる方法の一つとして、

お客様用に暖かいお茶とお菓子の試食品を用意することにしました。

 

試食などのフロントエンドがあることによってお客様に商品の良さをアピールし、

商品の購入にスムーズにつながりやすくなると思ったからです。

 

 

そして試食に来ていたお客様によく

 

「どうですか?おいしいですか?」

 

と聞いていました。

 

今にして思えばそうした何気ないお客様とのやり取りが、

コミットメントと一貫性の原理を働かせていたように思えます。

 

 

それ以外にも様々な仕掛けを施していたというのもありますが、

食の合戦での売上は前回参加時の2,4倍にもなり、

全ての商品を完売させることができました。

 

 

コミットメントと一貫性の注意点

 

ここまでの話をご覧になった方の中には

 

・「何だか少しずつお客様をコントロールしていくみたいなやり方だな…」

・「詐欺とかにも使えちゃいそうな感じだな…」

 

と感じた方も多いことと思いますが、

その通り詐欺にも使えてしまうんです!

 

 

実際にこのコミットメントと一貫性の原理を応用して、

役立たずの商品を売りつける詐欺業者もいます。

 

 

ですが、ビジネスというのはあくまで

「お客様の不満や欲求を解消し、その対価としてお金をもらう」ということです。

 

つまりお客様を幸せにすることが何よりも大切です。

 

 

こうしたテクニックを使って人を騙して商品を売りつければ、

その時は利益が上がってウハウハになるかもしれません。

 

しかし、今はインターネットで簡単に悪評が広まる時代です。

 

悪いことをしていればすぐにバレますし、

あっという間に拡散されてしまいます。

 

 

そして世間からの信用を失ってしまえば、

もう誰も騙されません。

 

あなたの会社の名前や商品の名前を聞いただけで拒絶反応を起こす人もいるでしょう。

 

そして「やっぱり悪いことはしちゃダメだ!これからは真面目にやろう!」

と心を入れ替えても、その頃にはもう誰もあなたの会社を相手にはしてくれません。

 

最後には孤独と後悔だけが残ってしまうのです。

 

ビジネスの鉄則はお客様第一

 

コミットメントと一貫性の原理は、

上手く使えば利益を向上させるのに役立つ知識ではあります。

 

ですが、あくまで「お客様のため」というのを第一に考えて、

使いどころには気をつけましょう。

 

 

コミットメントと一貫性の原理まとめ

・人間は自分の決定や立場を正当化するように行動・発言する

・相手の決定や立場を変えることは難しい

・コミットメントと一貫性の原理を応用して売上をアップさせることが可能

・ビジネスではあくまで「お客様のため」が最重要!

 

 

コミットメントと一貫性の原理を理解することで、

ほんの些細な工夫で売上を伸ばすことも可能です。

 

しかし、あくまでビジネスはお客様第一!

 

お客様の不利益になるような活用法は将来的な大損をまねくので、

使い方には十分気をつけましょう。

 

営業に使える心理テクニック